ドクターズインタビュー

養ってほしい3つの力と4つの心構え
そして多くが学べる茨城県の魅力

筑波大学附属病院 (修学生医師6年目)
中泉 太佑  先生

研修先での経験が、今の私を支えています

私は医学部在学中に茨城県の医師修学資金貸与制度を利用し、現在は医師6年目です。筑波大学呼吸器内科の後期研修プログラムにおいて研鑚を積んでいます。

これまで地域の病院では、ひたちなか総合病院(ひたちなか市)や日鉱記念病院(日立市)などに勤務しました。前者は人口20万人の医療圏で唯一の総合病院(302床)で地域医療の要としての役割を果たしています。私はここで呼吸器内科医として外来も担い、特に喘息などでは専門的な治療を経験することができました。一方、後者は100床に満たない中小病院ですが昔から地元では“鉱山病院”と呼ばれ住民に親しまれています。同病院では外来患者さんを多く診る機会があり、呼吸器疾患だけでなく高血圧や糖尿病、そして脂質異常症などcommon diseaseの患者さんを多く診療することができました。

こうした茨城県内におけるさまざまな病院での勤務経験が、今の私を支えています。
今回、主に学生さんや研修医の皆さんへ向けたメッセージを贈らせていただきます。

学生時代にぜひ経験してほしい3つのこと

そうした私の経験から、学生時代にぜひやっておいてほしいことをアドバイスさせていただきます。

まずは英語の勉強です。最新の知見を学ぶためには英語論文を読む必要があり、論文を書く時も英語力が試されます。また、外来患者さんには外国人の方もいるので、簡単な医療面接ができるくらいの会話力を養っておいた方が、将来の成長につながると思います。比較的時間を確保しやすい学生時代に、英語の勉強をしておくことをお勧めします。

次は社会勉強になるような諸活動です。私は学生時代に剣道部に所属していましたが部活仲間とは今でも定期的に交流しており、人生の大きな財産になっています。また、卒業後は病院勤務や研修の毎日となるので、医療以外の世界を知る機会は学生時代だけになるでしょう。まだ時間が確保できる学生時代に、アルバイトなどで医療以外の世界を経験してみてもよいと思います。

最後は、茨城県が実施してくれている修学生向けイベントへの参加です。理由は、同じ立場の修学生と知り合える絶好の機会であり、県内の病院見学も効率よく経験できるからです。実際、私も見学先のひとつが初期研修先となりました。コロナ禍で対面式での実施は難しい状況ですが、機会があればぜひ活用してみてください。

私が大切だと思う医師としての4つの心構え

これから医師を目指す方に、地域医療を行う上での心構えとして4つのアドバイスを贈ります。

1つ目は、常に学ぶ態度を身に着けてほしいということです。治療や検査の内容は日進月歩で進歩しています。例えば、今では広く用いられている肺癌における免疫治療は、最近になり確立された治療法です。進歩を続ける医療知識に後れをとることのないよう、常に学ぶ姿勢が大切だと思います。

次は、多様な個性や価値観を理解する度量です。日々診療していると、患者さんやご家族は多様な個性や価値観を持っていらっしゃることを実感します。そうした個性や価値観を踏まえて診療方法を提案できないと、患者さんの信頼は得られにくいと思います。医師には相手の話を聞いて“人を診る”力が不可欠だと思います。

3つ目は、常に一定以上の診療の質を維持できることです。優れた手技も大切ですが、それ以上に一定レベルの診療の質を維持できることが肝要です。若手の頃はできないことも多くストレスを感じ、時には理不尽と思えることに耐えなければならないでしょう。しかし、そうしたストレスとうまく付き合いながら、一定以上のパフォーマンスを提供できるような忍耐力を養うことが大切です。

最後は、悩みを抱え込まずに相談することです。自分で解決しようとする姿勢は大切です。ただ、周囲に相談することで意外にもスムーズに解決でき、自分の気持ちも楽になることが多々あります。いつまでも抱え込もうとせず、先輩をはじめとする“仲間”に相談することは自分が成長できる機会でもあり、先ほどの質を維持することにもつながると思います。

若手医師が学び、働きやすい環境がある それが茨城県の大きな魅力

私は茨城県以外での診療経験はありませんが、茨城県外で診療している友人の話を聞いていると、県内の患者さんは若手の医師であっても診療に非常に協力的で、信頼を寄せてくれる方が多いことを実感しています。中身のある地域医療を提供するには、患者さんやご家族の信頼を得て診療に協力してもらうことが欠かせません。もちろん、そうなるよう努力する姿勢が大切ですが、医療者に協力的である県民性は、研鑚を重ねなければならない若手医師にとってとても学びやすく、働きやすい環境だと思います。

私は日鉱記念病院での経験が特に印象深いです。市民病院のような役割を果たしている病院で、患者さんや地域の方々に頼られていることを強く実感できました。若輩の私のことも頼りにしてくださる方も多く、診療に快く応じてくださり貴重な機会に恵まれました。若手のうちにこうした経験ができたことは私の大きなやりがいとなり、非常に大切な経験だったと思っています。これからも信頼に応えられるように研鑽に励みたいと思います。

また、茨城県内の各施設では看護師や技師、薬剤師といったコメディカルの方々も、地域医療の実践において協力的でモチベーションが高い方が多いと思います。例えば、呼吸器内科においては多職種が連携した吸入導入ネットワークが運用されています。医師だけではなく多職種が協力することで、患者さんの年齢やADL、そして日常生活をほう助した、より質の高い吸入治療を目指すことができました。呼吸器内科に限らずとも茨城県にはこうした医療者全体の協力やモチベーションの高さにより、専門的で質の高い地域医療を提供できる環境が整っていると思います。

そして茨城県は、非常に生活しやすい県だといえるでしょう。東京へのアクセスが良い一方で、豊かな自然が広がり都会過ぎないところも魅力です。海や山の幸も豊富で食べ物がおいしく、酒蔵も多いなど食生活にも大きな魅力を感じています。私もこうした環境を生かして、休日には自然豊かな場所にドライブにでかけておいしいものを食し、心と体をリフレッシュすることがあります。
魅力をあげるときりがないくらいですが、茨城県には医師として大きなやりがいを感じることができる環境があり、専門医としてのモチベーションも高くできる場所だと思うのです。

医学生の皆さんへ

皆さんが医師を志した理由や背景は様々でしょう。しかし、医師を目指して勉強できる環境があることは、それを支えてくれている人々がいるということです。ご家族をはじめとした周囲の方々への感謝の気持ちを忘れることなく、自分が理想とする医師を目指してほしいと思います。
何年か先、茨城県内の医療現場で皆さんと一緒に働けることを楽しみにしています。